シンガポールはよく「人種のるつぼ」と言われますが、そんなシンガポールにはもう一つの「るつぼ」が存在するのです。
シンガポールの文化を象徴するものの一つに「ホーカー」があります。 ホーカー(hawker)とは、露店商を意味する言葉で、元々は個別の屋台だったものが、政府の政策により衛生面に配慮された屋台街:ホーカーセンターへと発展しました。日本でいう“フードコート“のようなもので、人々の生活においてとてもよく利用される場所となっています。一般的に自炊をする習慣があまりないと言われているシンガポール人の胃袋を支えているのがこのホーカーなのです。
ホーカーで提供される料理は、多民族国家のシンガポールらしく、中華料理やマレー料理、インド料理、欧米料理などバラエティに富んだものとなっており、 もちろん日本食も食べることが出来ます。各店舗では目の前で調理をする様子を見ることができ、賑やかな雰囲気の中で食事を楽しめます。
今では、ホーカー巡りをするホーカーグルメファンの観光客も多く、観光スポットの一つにもなっています。
また、ホーカーはコミュニティとしての役割も果たしており、さまざまな人々が朝食、昼食、夕食を通して同じ空間で食事をしています。宗教や食文化の違いに関係なく、見知らぬ人同士が一緒に食事をしたり、交流したりすることもあります。
今日、シンガポールには100以上のホーカーセンターがあり、2027年までにさらに13のホーカーセンターが開発される予定となっています。また、昨年3月、政府はホーカーセンターの世界文化遺産への登録申請を行ったところです。
「人種のるつぼ、ならぬ、グルメのるつぼ!?」であるホーカーは、今後もますますシンガポールの象徴となりそうです。
シンガポール事務所 所長補佐 井上