クレアシンガポール事務所では、先進的な施策で注目を集めるシンガポールにおいて日本の自治体職員が政策の企画立案に必要な知識を習得することを目的に、シンガポール政策研修プログラムを実施しています。
2015年6月22日(月)から23日(火)の2日間にわたって開催した政策研修コース2日目のうち、今回は住宅開発庁(HDB:Housing & Development Board)訪問とプンゴル・エコタウン住宅の視察内容をお伝えします。
1959年にマレーシア連邦の一自治州となった当時のシンガポールは、生活環境の悪さやインフラ整備の欠如といった多くの問題を抱え、その中でも住宅不足は深刻でした。州政府は早急な住宅建設を進めるため、1960年にHDBを創設しました。
これまでHDBが建設した住宅(HDB住宅)は100万戸を超え、現在では80%以上のシンガポール国民がHDB住宅に入居しています。
シンガポール政府は、所得や入居形態、購入物件の部屋数などに応じた助成金を交付し、住宅を購入することが困難な低所得者には低価格でHDB住宅を提供する制度を設け、国民のHDB住宅購入を促進する「持ち家政策」を実施しています。住宅を購入するほとんどの国民は、強制的な積立制度である中央積立基金(CPF)から購入資金を調達しており、一般的な住宅ローンの月平均返済額は給与の4分の1以下となっています。
HDBは環境に優しいHDB住宅の建設に取り組んでおり、2010年にシンガポール初のエコタウン住宅であるTreelodge@Punggolをプンゴル地区に建設しました。Treelodge@Punggolのコンセプトは「熱帯の気候と共存したウォーターフロントタウン」で、住民が快適に暮らしながら周辺の環境保全に一定の役割を果たせるようになっています。
特徴としては、以下のような取り組みが挙げられます。
太陽の光や熱、風といった自然の恵みを採り入れ、エアコンなどの利用を抑えながら快適に暮らすことを目指した設計である「パッシブ・デザイン」を用いて建築されています。
住宅周辺には「グリーンパス」という緑があふれた通路があり、住民はジョギングや散歩が楽しめます。また、共有部分に整備された「コミュニティ・ガーデン」では、ガーデニングや家庭菜園を楽しめます。
住宅の屋上には太陽光パネルが備え付けられ、発電された電力は共用スペースの照明やエレベーターなどへ配電されます。住民は発電状況を各エレベーターに設置されたパネル表示で確認できます。雨水も貯水される仕組みとなっており、共用スペースの清掃や植物への給水に使われています。これらのグリーン技術は、資源の乏しいシンガポールにおいて快適な住環境を確保する取り組みとして、今後建築されるHDB住宅への導入が検討されています。
当事務所では、今後も政策の企画立案に役立つような研修プログラムを企画していきたいと考えております。その際は、当事務所メールマガジンやホームページ等でご案内いたしますので、海外派遣研修の一環としてご活用ください。
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