スコータイ県はタイ北部に位置する人口60万人の都市で、1991年にユネスコの世界文化遺産に登録されたスコータイ歴史公園をはじめ、美しい自然や伝統工芸品、ホームステイなどの様々な観光資源があります。
その観光資源をどのようにプロモーション(海外にPR)していけばよいか専門的なアドバイスを行うことが目的で、当事務所が実施する専門家派遣事業において、2015年1月17日(土)から22日(木)まで、鳥取県の職員が観光振興の専門家としてスコータイ県へ派遣されました。
開会式では、最初にタイ政府観光局と鳥取県が観光客の現状や観光政策についてプレゼンテーションを行い、その後、スコータイ県の行政官、地元の旅行会社やホテル事業者、小中学生の観光ボランティアガイドが、スコータイ県の観光の魅力や問題点について専門家とディスカッションを行いました。
タイ政府観光局によるとスコータイ県を訪ずれる観光客数は年々増加しており、2013年は、前年度比11%増の111万人となっています。しかしその内タイ人が7割を占めており、また、3割の外国人のほとんどが欧米人で日本人は4,000人の観光客に留まっています。今後、日本を含む海外からの観光客を増加させ2015年には150万人とすることを目標としており、今後の海外に向けたPRや情報発信が課題となっています。
ホテル事業者や小中学生の観光ボランティアからは、スコータイ県の観光地は比較的コンパクトにまとまっているが、市街地から主要観光地に行くバスは乗り継ぎが必要でタクシーもあまり走っておらず値段も統一されていないので、公共交通機関をはじめとした二次交通の整備が必要との意見が出されました。専門家は鳥取県内で運行されている観光地をつなぐ観光バス「大山るーぷバス」を紹介しながら観光客の利便性を高める取り組みについて説明しました。
スコータイ県には世界文化遺産や「ラムカムヘーン・フェスティバル」という大きなイベントがあるが、情報発信がうまく行われていないので、専門家にこの魅力的な観光地を実際に「見て」「体験」してもらいスコータイ県の観光振興に良いアドバイスをいただきたいとの提案がありました。
専門家はスコータイ県の観光地の現状と課題を踏まえ、小中学生の観光ボランティアガイドも一部同行して各種観光資源の視察を行いました。主な視察先は下記のとおりです。
スコータイ歴史公園は、タイで最初の独立王国として栄えた700年前のスコータイ時代の遺跡が残る公園で、1991年にはユネスコの世界文化遺産に登録されました。公園の総面積は70㎢あり、レンタサイクルで園内を回ることができます。また、各遺跡の前には日本語を含む多言語に対応したQRコードがありました。
1月17日から3日間、スコータイ時代の国王であったラムカムヘーン大王のお祝いとして開催されており、スコータイ県で大規模なイベントとなっています。会場内では、フードマーケットや地元の高校生による「人間チェス」や「光と音楽のフェスティバル」「伝統衣装によるファッションショー」などが開催され多くの来場者がありました。
地域全体でホームステイに取り組むナ・トン・チャン地区を訪問し、地域の伝統料理の調理体験や地区内の暮らしを見ることのできるサイクリング、ホームステイ先の家族との夕食や伝統ダンスでの交流を行いました。
5日目には、最初に専門家による鳥取県の観光政策や取り組みについて講演があり、「国際リゾートとっとりプラン」やエコツーリズム・スポーツツーリズムの推進などによる外国人観光客受け入れ体制の整備状況、鳥取砂丘をはじめとする鳥取県の魅力的な観光スポットの紹介がありました。続いて、開会式のディスカッションで意見のあったスコータイ県の魅力や問題点について、これまでの観光資源や関連施設の視察を踏まえ、総括として専門家より下記6点のアドバイスがありました。
①インターネットを活用して多言語での「ラムカムヘーン・フェスティバル」の国際的なプロモーションを行う。
②お土産・お菓子などの包装を中身が見えるようにする。英語表記や写真でスコータイと分かる表示をする。
③初期投資のかからないSNSを活用(情報発信)する。
④ホテル・レストランでの多言語対応や写真によるメニューを作成する。
⑤アンケートで国ごとのニーズを把握し効果的な観光パンフレットを作成する。
スコータイ県自治体長より今回の専門家派遣事業をきっかけに観光分野以外も含めた継続的な交流を鳥取県としていきたいとの提案がありました。専門家からは鳥取県が昨年度から実施しているタイの青年を鳥取県に招聘し鳥取県の魅力を知ってもらう「スマイル・サポーター育成事業」の紹介があり、今後の交流についてはスコータイ県側の意向を踏まえ検討していきたいとの説明がありました。
今回の専門家派遣事業により、参加者からはこの事業をきっかけに今後の海外プロモーションを積極的に展開していく意欲が感じられました。また、この事業が国境を越えた自治体同士の有意義な情報交換の場となり、将来の交流の懸け橋となることが期待できると実感しました。
今後もクレアでは、自治体のこうした活動をサポートし、日本の自治体職員が持つ知識と経験を海外自治体に伝えることによって交流・協力関係を深めていきたいと思います。
【自治体国際協力専門家派遣事業に関するお問い合わせ先】
一般財団法人自治体国際化協会交流支援部経済交流課
電話:03-5213-1726
(金子所長補佐 山口県山口市派遣)