クレア主催により、2017年2月13日から17日にかけてインドで自治体国際協力専門家派遣事業を実施しました。この事業は日本の自治体が持つ行政ノウハウを海外の自治体に移転し、講義や実技を通じて知識技能を伝える事業です。今回、グジャラート州ポルバンダル市からの要望を受け、廃棄物管理に関する専門家として愛知県豊橋市職員を派遣しました。専門家による指導の様子は現地の新聞等でも取り上げられ、大いに関心を集めました。
ポルバンダル市はグジャラート州の南西部に位置している市で、マハトマ・ガンジー氏の生誕地として知られています。同市では廃棄物収集車両で各家庭から出される廃棄物を戸別に回収するなど廃棄物収集に力を入れています。しかし、廃棄物の分別が徹底されておらず、どのように廃棄物を適正に処理していくべきか苦慮しているのが現状です。専門家とともに廃棄物投棄の現状を視察しましたが、処理しきれない廃棄物が遠く離れた公共の場所に積み上げられ、自然発火している様子を目の当たりにしました。専門家は、このようなポルバンダル市の状況を視察した上で、廃棄物分別の徹底や住民の廃棄物管理意識向上の重要性を中心に指導しました。
まず、日本と豊橋市における廃棄物管理を説明し、参加者に廃棄物管理に関する理解を深めてもらいました。ここで効果的であったのが、現時点の状況や施策を説明する前に、不衛生な状況から今日に至るまでの過程を時系列で紹介した点です。参加者の多くは、どの時期にどのような課題に直面し、どのように試行錯誤しながら克服したかという点について非常に強い関心を持ち、相次いで専門家へ積極的に質問していました。また、専門家との活発な議論を通じて、参加者一人一人が自分達の置かれている現状と照らし合わせながら、いかにして自分達のノウハウとして取り入れることができるかを真剣に模索していました。
最先端の廃棄物処理機械を導入したとしても、廃棄物が適切に分別されなければ設備の能力を活かしきれません。また、分別により廃棄物の再資源化が可能となり廃棄物の減量と活用につながります。専門家は、このように廃棄物分別がもたらす効果を説明し、廃棄物分別の徹底が廃棄物管理の基礎を確立するために不可欠なものであることを強調しました。そのうえで、廃棄物分別の種類や指定ごみ袋導入等の豊橋市の事例を紹介しながら、廃棄物を分別するための方策を参加者と議論しながら指導しました。
また、専門家は、住民の廃棄物管理意識を向上させるための参考事例として、豊橋市の「530(ゴミゼロ)運動」を紹介しました。「530」は「ゴ・ミ・ゼロ」と読み、「ゴミを捨てない」「自分のゴミは自分で持ちかえる」ことによって、住みよいまちづくりを推進する運動で、豊橋が発祥となり全国に広まったことでも知られています。専門家は、コミュニティ活動、環境教育にも言及しながら、「自分のまちは自分達できれいにする」という意識を根付かせることの重要性を強調しました。専門家による指導を知見として消化し、専門家による提言に真摯に耳を傾け、廃棄物管理能力を向上させようとするポルバンダル市の意気込みに深く感銘を受けました。
2016年11月にモディ・インド首相が訪日した際、安倍首相との間で、日印間の人の交流をさらに活発化させるため2017年を日印友好交流の年とすることで合意されました。今回の事業は、2017年日印友好交流年記念事業の認定を受けました。専門家の指導が行政ノウハウの伝授に留まらず日本とインドの友好協力関係を促進する契機となるとともに、廃棄物管理を推進する日本の自治体として、「Toyohashi」の名前がポルバンダル市に広く知れ渡りました。自治体国際協力専門家派遣事業は、国際貢献のみならず海外への自治体PRにもつながります。日本の自治体の皆さまにおかれましては、ぜひ同事業をご活用ください。
(自治体国際協力専門家派遣事業 http://www.clair.or.jp/j/cooperation/special)
(小暮所長補佐 東京都派遣)